〇 公共図書館による文芸書の寄贈呼びかけをめぐる問題

2016.07.21 Thursday

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    〇 公共図書館による文芸書の寄贈呼びかけをめぐる問題

     

                                                                   2016. 7.21  薬袋秀樹

     

      『朝日新聞』「図書館考」の「ドイツ編 上」(板垣麻衣子記者)(6月14日32面)では、

    共図書館による文芸書の寄贈呼びかけの問題点について報道しています。

      富山県の高岡市立図書館は、数年前から、ホームページで、人気のある文芸書の書名・著者

    名を挙げて寄贈を呼びかけてきました。リストに自分の小説があることを知った作家・万城目

    学氏が、ツィッターで「すべての図書館がこのやり方で本を集め、タダで貸し続けたら、作家

    は死にます」と指摘したため、同館はこれを受けてリストを削除しました。記事では、同館の

    判断について次のように述べています。

     

      同館は『朝日新聞』の取材に、「作家が困ると言っている以上、リストは載せないように

     しようと判断した」と説明。一方で、「予算が削られる中、予約が集中する本を少しでも多

     くの利用者に提供したい」と、「出版5年以内の本」「人気のある児童書」など、書名の特

     定は避けつつ、今後も呼びかけを続けるという。

     

     このことは、『朝日新聞』よりも早く、ニュースサイト『J-CASTニュース』(5月24日)が

    り上げました(注1)。『J-CASTニュース』では、「それでは寄贈してくれる人がいるのか、

    というとそうでもないらしい」と述べ、高岡市立図書館の「ハードカバーのものについては、

    必ずしもいただけていない、というのが現状です。文庫本など、呼びかけていないものは多数

    来るのですが・・・」という回答を紹介しています。

     『北日本新聞』( 6月12日)も取り上げています(注2)。県内では、2市の図書館が「HP

    に書名を挙げて新刊の寄贈を呼び掛けている」とありますが、現在は、リストのない一般的な

    寄贈のお願いに改められています。記事の最後に、「県図書館を考える会の江藤裕子代表(富

    山市)は「図書館は未来の読者を育てる大切な場所。問題の本質は、予算が削減され、寄贈に

    頼らなければならない現状にあるのではないか」と指摘する」というコメントがあります。

     この問題は、2013年に、インターネット新聞『The Huffington Post』(12月22日)でも取

    り上げられています(注3)。万城目氏のツィートとそれに対する6人のツィートが収録されて

    います。

     今回、『J-CASTニュース』は、5月23日に日本図書館協会に取材を行っています。日図協の

    回答は次のとおりです。

     

     また、出版不況の原因については、

     

      「売り上げが落ちているのは図書館が新刊を貸し出しているから、というのとは別の要因

      だと思いますよ。借りたら買う人が減る、ということもないと思います。なぜなら、借り

      る層と買う層は異なっているからです」

       と説明した。

     

       一方、全国の図書館で新刊本の寄贈を求める動きがあることについては、買いたくても

      買えない「予算不足」を理由に挙げた。1990年半ばから公立図書館の図書購入費は下がり

      続けている。これは地方財政の悪化が影響していて、図書購入費だけでなく図書館職員の

      人員削減も起こっている、と明かした。仮に、全国の公立図書館が新刊の寄贈を求めたと

      しても、

     

       「全く影響がない、とは言えないかもしれませんが、あったとしても極めて微々たるも

      のだと思います」

     

      と話していた。

     

      紹介は以上です。『朝日新聞』も詳しくは紹介していないので、まず、多くの人に知って

    いただく必要があると考えています。それぞれの記事を読んでいただければ、幸いです。

     

    1)「図書館が新刊本の寄贈を求めるの「やめて!」小説家が「本売れなくて死んでしまう」

        と訴える」『J-CASTニュース』2016/5/24

           (http://www.j-cast.com/2016/05/24267633.html?p=all

    2)「新刊寄贈願いやめて 作家・万城目さん、高岡市立図書館に苦言」『北日本新聞』2016

        年6月12日(http://webun.jp/item/7284096

    3)「「人気図書寄贈のお願い」は是か非か?公共図書館にベストセラー作家が苦言」

        『The Huffington Post』2013年12月22日

         (http://www.huffingtonpost.jp/2013/12/21/library-reservation_n_4486803.html