〇 図書館にとっての公貸権制度の長所−図書館振興に対する作家の協力

2016.06.28 Tuesday

0

    〇 図書館にとっての公貸権制度の長所−図書館振興に対する作家の協力

     

                                      2016. 6.28 薬袋秀樹

     

     公貸権制度の長所にはどのようなものがあるでしょうか。作家にとっての長所と図書館にと

    っての長所が考えられます。ここでは、図書館にとっての長所について考えてみたいと思いま

    す。

     スウェーデンのストックホルム市立図書館で働く白井静子さんが、スウェーデンの公貸権に

    ついて紹介しています。(白井静子「スウェーデンの公貸権」(『みんなの図書館』199、

    1993.12、p.52-55)。

     スウェーデンでは、1954年に公貸権制度が定められ、国から作家に対して補償金、公貸権料

    が支払われています。補償金は、スウェーデン著作家基金に払い込まれ、そこから配分されま

    す。1930年代に始まった「図書館からの補償金」という考え方は、「国からの補償金」という

    考え方に変わり、やがて「成された仕事に対する報酬」という考え方に変わってきました。

    「作家への奨学金」も、大学の研究者が研究のために奨学金をもらうのと同格に扱うべきであ

    るという考え方に変わってきました。

     白井さんは、作家と図書館の関係について指摘しています。「スウェーデンでの作家と図書

    館との関係は、日本に比べて密接です。図書館へ作家を招いての懇談会、挿絵画家の展示会、

    詩の朗読会は常時どこの公共図書館でもしていますし、図書館の分館が閉鎖されそうになった

    り、活動が縮小されるというニュースが新聞にのると、まず一番に反対声明を出すのは作家同

    盟です」(p.55)。

     公貸権に対して図書館がどんな態度を取ったかは書かれていませんが、重要なのは、図書館

    と作家の間に対立がなく、作家が図書館振興に協力していることです。ここには、図書館関係

    者だけが図書館振興を進めるのではなく、図書館は作家の協力を得て図書館の振興を図るとい

    う考え方が見られます。

     この考え方は、根本彰氏(2004)も指摘しています。公貸権導入の長所として、 崕佝濃

    場を支えるもう一つの制度である図書館の存在を法的に認知することになる」、◆嶌0幣紊

    図書館と著作者や出版関係者との連携を強めることになる」の 2点を挙げていますが、白井さん

    の指摘するスウェーデンの事情は△謀たります。

       公貸権については、このような観点からも考える必要があります。