図書館評価と貸出冊数(1)

2017.09.24 Sunday

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    図書館評価と貸出冊数(1)

                                   2018. 1.30 薬袋秀樹

     

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    ‖濬从数の評価

     公立図書館の重要な課題のひとつは図書館評価です。最近、また、貸出冊数による評

    価を重視する考え方が見られるようになりました。大変不思議な気がします。貸出冊数

    の非常に多い図書館のリストや、貸出冊数による評価と「望ましい基準」を結びつける

    意見まで見られます。このことについて考えて行きたいと思います。

     『図書館ハンドブック』第6版(日図協、2005)を見たところ、次のような記述があ

    りました(p.179)。

     

    第珪蓮/渊餞朷弍

     H 図書館の統計と調査

      2 統計の種類

      b 利用統計

          (1)統計の種類 

          (b)特徴と課題

    (中略)

      しかし近年図書館を評価する基準として、貸出統計に偏重しすぎているのではないか

    という疑問も提起されている。

    (中略)

    ・貸出件数はさまざまな要素(例えば、資料費、職員数、予約への取組み、レファレン

       ス担当者の質など)が影響しており、貸出件数の多寡だけによる図書館の評価は困難

      である。これはどの要素がプラスに作用し、どの要素がマイナスに作用しているのか

      といった評価に不可欠の点が分離不可能な形で含まれているからである。

     (中略)

    ・貸出件数は目的ではなく結果であり、必ずしも貸出件数の多い図書館イコール優れた

       図書館ではないが、貸出件数が平均を下回っている図書館は図書館サービスのどこか

       に問題があるといえる。つまり、貸出件数はすぐれた図書館かどうかを判断する際の

       必要条件ではあるが、十分条件ではないということである。

     

     この記述はほぼ適切だと思います。“貸出件数の多寡だけによる図書館の評価は困難

    である”、“貸出件数の多い図書館は必ずしも優れた図書館ではない”と述べている点は

    評価できます。

     ここから、優れた図書館は「貸出冊数が一定冊数以上で、他の点でも優れたサービ

    スや運営を行っている図書館」であるという考え方を導くことができます。「一定冊

    数」の決め方が難しいのですが、評価の高い図書館の多くがクリアできる冊数になる

    と思います。

      さらに補足すると、貸出件数に影響を与える要素として、蔵書中のコミック、DVD

    の点数、一人当たりの貸出制限冊数があります。貸出冊数の非常に多い図書館の中には、

    少数ですが、貸出冊数無制限で、蔵書中のコミックやDVDが多い図書館が含まれてい

    ます。これらの図書館については、特に、それ以外のサービスも評価する必要があると

    思います。

     議論をするときは、このように、『図書館ハンドブック』のような資料から始めると、

    効率的です。

     

    国会の附帯決議

     公立図書館の評価の在り方に関してはいくつかの指針があります。2008年の図書館法

    を含む社会教育の一部改正に際して、国会で次の2つの附帯決議が行われています。

     

     社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

                         2008年5月23日 衆議院文教科学委員会

     

     三 公民館、図書館及び博物館が自らの運営状況に対する評価を行い、その結果に基

       づいて運営の改善を図るに当たっては、評価の透明性、客観性を確保する観点か

       ら、可能な限り外部の視点を入れた評価となるよう、国がガイドラインを示す等、

       適切な措置を講じるとともに、 その評価結果について公表するよう努めること。

     

     社会教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

                         2008年6月3日 参議院文教委員会

     

     四、公民館、図書館及び博物館が自らの運営状況に対する評価を行い、その結果に基

       づいて運営の改善を図るに当たっては、評価の透明性、客観性を確保する観点か

       ら、可能な限り外部の視点を入れた評価となるよう、国が関係団体による評価指

       標作成等に対して支援する等、 適切な措置を講じるとともに、その評価結果に

       ついて公表するよう努めること。その際、公民館運営審議会、図書館協議会及び

       博物館協議会等を通じて、地域住民等の意見が反映されるよう十分配慮すること

     

     両者の相違点は次のとおりです。第一に、国の支援内容について、衆議院は「ガイド

    ラインを示す等」ですが、参議院は「関係団体による評価指標作成等に対して支援する

    等」です。

     第二に、参議院では、末尾に、「その際、公民館運営審議会、図書館協議会及び博物

    館協議会等を通じて、地域住民等の意見が反映されるよう十分配慮すること」が加わっ

    ています。

     ここから明らかになることは、具体的な「評価指標作成」は国の役割ではなく、「関

    係団体」や個々の社会教育施設の役割であり、国の役割は、ガイドライン(大まかな指

    標)を示し、関係団体の取組を支援する役割にとどまるということです。

     評価指標の内容については、「評価の透明性、客観性を確保する」こと、「可能な限

    り外部の視点を入れた評価」とすることの2点が求められています。外部の視点を含む

    客観性のある評価には、個々の社会教育施設を超えたより大きな取り組みが必要です。

     社会教育のうちの博物館では、日本博物館協会(日博協)が博物館の評価において大

    きな役割を果たしています。図書館でも、日本図書館協会や関係学会等の団体に同じ役

    割が期待されていると思われます。

     つまり、ここで、国会の手によって、「図書館評価」というボールは日本図書館協会

    をはじめとする図書館関係団体に投げ返されたのだと思います。このことについて、ど

    のような議論が行われてきたのでしょうか。

     それから約10年が経過しています。

    (以上)