〇 エンターテイメント系小説の販売冊数と貸出回数の比較

2017.03.10 Friday

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    ○ エンターテイメント系小説の販売冊数と貸出回数の比較

     

                                                             2017. 3.10  薬袋秀樹

             

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     公共図書館におけるエンターテイメント系小説の貸出が市場におけるその販売に影響

    するかどうかについて、一部の図書館関係者は、様々な数字を挙げて、影響は小さいと

    主張してきました。

     たとえば、出版販売総額に対する図書館資料費総額の比率、貸出図書中の新刊図書の

    比率などです。これについて、私は、今、問題になっているのは「エンターテイメント

    系小説」であり、上記の数値は「図書一般」に関するもので、エンターテイメント系小

    説に関するものではないことを指摘しました(注1)。

      では、エンターテイメント系小説の販売と貸出の関係を解明するには、どのような数

     値を検討すればよいのでしょうか。出版関係者や研究者によって、これまで指摘された

     例を挙げてみたいと思います。次の4つの例が挙げられています。

     

      屐慍色軍艦』(中略)という本があります。これは発行部数が 3,000冊なのですけ

        れども、図書館には 750ほど置かれておりまして、これが 4,000回以上借りられてい 

            るのです。つまり、本を読んだ人の半分以上が図書館で読んでいる」(作家・三田誠

         広、2003年11月)(注2)。

     

     ◆峺什漾日本の公共図書館数は約3200館である。図書館は1冊の本を年間20人以上の

            利用者に貸し出すことができるから、全ての図書館に皆が読みたいと思うものを1冊

            置くだけで、 1年に全国で 6万回以上の貸し出しが可能になる」「本を借りる人と買

        う人は同じでないといっても、芥川賞・直木賞候補作ですら初刷りが1万部を超える

        ものが珍しいと言われているご時世に、この数字は決して無視できないだろう。出版

        社や作家の主張には一定の根拠がある」(根本彰、2016年1月)(注3)

     

     「実売が1万2000部しかなかった本で、図書館に2500部入っているようなことがあり

      す」(新潮社・佐藤隆信社長、2016年 2月)(注4)

     

     ぁ崢礁攵泙鮗賞して油ののっている作家の本があります。発売後 8カ月の売り上げの

        推移( 8カ月データといいます)を見てみると、初版部数 2万5000部の本が 2カ月で

        約 2万部売れ、その後、ぱたっと売れ行きが止まり、5000部ほどが戻ってきてしまう

        のです。その間、図書館ではその本がベストオーダーに入り、延べで 4万冊以上(推

        定)が貸し出されています。それでなお予約が殺到しているという状態なのです」  

       (新潮社・石井昴常務取締役、2016年 6月)(注5)

     

        このように、ベストセラーではない、人気のある小説について、販売部数と貸出回数

     を比較する必要があります。これによって、図書館の貸出の占める比率の高さが理解で

     きると思います。

     

    1)薬袋秀樹「公共図書館の貸出が図書の販売に与える影響に関する議論の特徴」『三田

        図書館・情報学会研究大会発表論文集』2016年度,2016.10,p.21-24)

        (http://hdl.handle.net/2241/00144267 

    2)三田誠広、平井彰司、山本順一、手嶋孝典、酒川玲子「パネルディスカッション「公

        貸権問題」」『平成15年度第89回(静岡大会)全国図書館大会記録』全国図書館大会

        実行委員会事務局編集・発行,2004.3,p.130-141.三田誠広氏の発言. 引用はp.132.

    3)根本彰「出版市場とは区別せよ」『毎日新聞』2016年1月15日(金)11面

    4)佐藤隆信、糸賀雅児「対談「貸出猶予」提案を問う」『文化通信』4237号,2016.2.8,

      p.1,8. 引用は p.1.

    5)石井昴「未曾有の出版危機の正体:公立図書館との新たな共生の道を探る」『現代の

        図書館』54(2),2016.6,p.68-72. 引用はp.71.

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