図書館法第2条の「調査研究」は理解されているか

2017.04.06 Thursday

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    〇 図書館法第2条の「調査研究」は理解されているか

     

                                    2017. 4. 7  薬袋秀樹

     

    1.図書館法第2条の「調査研究」の規定

     

      図書館法第2条では、図書館とは、「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存

    して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的

    とする施設」と定められています。目的の2番目に「調査研究」が含まれている点が重要です。

     3つの目的の一つが「調査研究」ですから、機械的に理解しても、図書館の資源の3分の1

    を「調査研究」に向ける必要があります。

      また、これは図書館一般に関する規定ですから、町村立図書館も私立図書館も含まれます。

    実際、町村でも、必ず「調査研究」を行っている人がいますから、町村立図書館にも調査研究

    に対するサービスが必要です。また、図書館はシステムを構成しますから、分館でも調査研究

    に対するサービスが必要です。

     このように、法律で明確に定められている「調査研究」ですが、公共図書館関係者にはどの

    程度知られているのでしょうか。

     レファレンスサービスや資料選択を論じる際には、その背景として、図書館の目的に「調査

    研究」が含まれることを理解している必要があります。「調査研究」が理解されないと、レフ

    ァレンスサービスや資料選択に関する議論は深まりません。

     しかし、これまで、図書館職員の人々から、この規定の「調査研究」に関して、意見を聞い

    たことはほとんどありません。目的に関する規定ですから、「レファレンスサービス」や「専

    門書の収集」とは異なります。市民が日常的にものごとを調べているという認識が足りないの

    ではないでしょうか。

     

    2.図書館職員の理解

     

      1990年代末頃、東京都内の区立図書館職員の研修で、この規定を説明したところ、受講者で

    ある中年の男性職員から、「調査研究は都立図書館がやればよい。区立図書館は娯楽でいいん

    だ」という意見が出て、大変驚きました。受講対象は、実務経験1年以上3年未満の職員でし

    たので、図書館に異動してきた事務職員だったと思います。他の職員もそれに同調する雰囲気

    でした。

     その場では、「調査研究」を文字通りに理解したものと考えて、日常の様々な「調べもの」

    に始まることを説明しました。この職員の勤務先は人口20万人台でしたので、地方では大きな

    市に当たります。

     ここにはいくつかの問題があります。まず、法律の規定を尊重せずに、自分の判断を優先す

    る姿勢です。次に、住民の要望を「娯楽」に集約し、「娯楽でいい」と言い切る姿勢です。し

    かも、通常ほとんど意見が出ないのに、わざわざ、そのことについてはっきり意見を述べてい

    ます。

     これは、当時の区立図書館の職員の一部の雰囲気の現れであるかも知れません。また、一般

    市民の図書館に対する理解にもつながっているかも知れません。

     これは、事務職の場合ですが、司書についても、同様の雰囲気を感じてきました。

     

    3.「調査研究」に関する学習

                 

     そもそも、司書の人々は、大学で「調査研究」についてどの程度学習しているのでしょうか。

     それを確かめる一つの方法として、「図書館概論」「図書館制度・経営論」「図書館法」等

    のテキストで、図書館法第2条のこの規定がどう論じられているかを調査する方法があります。

    ごく一部を調査してみましたが、あまり論じられていないように思われます。今後、調査した

    いと思います。

     次に、「調査研究」と聞いて、その内容や必要性を具体的にイメージできるでしょうか。言

    葉の上での理解では不十分です。

     私達の社会で、「誰が・なぜ・何のために・どのような調査研究を・どのような方法で行っ

    ているのか」を具体的に思い浮かべられることが必要です。生活や仕事の様々な局面でそれぞ

    れに応じた調査研究が必要であり、行われていることをイメージできる必要があります。

     これは、高等学校を卒業して1〜2年の、専門科目に関する学習を始めたばかりの大学生に

    はかなり難しいことです。また、理解できたとしても、自分の専攻に関連する範囲に限られる

    と思います。

     したがって、この規定について学習するには、「調査研究」の具体例を挙げて説明すること

    が必要です。授業では、生活や仕事のいくつかの場合を想定して、「誰が・なぜ・何のために

    ・どのような調査研究を・どのような方法で行っているのか」「図書館はそれをどう支援でき

    るのか」を説明する必要があると思います。

     現在なら、「課題解決支援サービス」の説明の際に具体例として挙げられているかも知れま

    せん。それだけ理解しやすくなりました。しかし、課題解決支援サービスを学んでいない人も

    多いので、図書館職員全体が「調査研究」のための利用の具体例を理解することが必要です。

    
    

     

    
    

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    2017.05.16 Tuesday

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